みなさん、こんにちは。
前回に引き続き、今回も胃癌をテーマにお話ししたいと思います。
今回は治療についてです。
前回早期癌、進行癌についてお話ししましたが、胃癌には病期(ステージ)というものも存在します。
TNMの3種類のカテゴリー(TNM分類)の組み合わせで分類されているもので、T:tumor N:lymph nodes M:metastasisに分けて考えます。
上の表のごとく、癌の深達度(=深さ)(=Tカテゴリー)、リンパ節転移の個数(=Nカテゴリー)、遠隔転移の有無(=Mカテゴリー)でステージIA,IB,IIA,IIB,IIIA,IIIB,IIIC,IVと8段階に分類されています。
胃癌の治療は大きく分けて①内視鏡的切除②手術③薬物療法(化学療法、抗癌剤治療)があります。
まず内視鏡的切除についてです。
内視鏡の先端から、スネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーをかけて、病変を切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)と高周波ナイフで粘膜下層から病変をはぎ取るように切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)があります。
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
胃癌ガイドラインでは、EMR/ESD の絶対適応病変は「長径2cm以下のUL0の肉眼的粘膜内癌(cT1a)、分化型癌」とされており、ESDの絶対適応病変は「①長径2cmを超えるUL0のcT1a、分化型癌、②長径3cm以下のUL1のcT1a、分化型癌、③長径2cm 以下のUL0のcT1a、未分化型癌」とされています。UL0とは潰瘍がない場合、UL1とは潰瘍が存在する場合のことを言います。
次に外科的治療(手術)についてです。
遠隔転移がなく、内視鏡による切除が難しい症例は手術による治療が推奨されています。現在はほとんどの手術が腹腔鏡下手術またはロボット支援下手術で行われています。
癌の手術は転移の可能性があるリンパ節を腫瘍と共に切除します。代表的な切除方法を下にお示しします。
胃癌の出来ている場所に応じて切除する範囲が異なります。
最後に薬物療法(=化学療法)についてです。薬物療法には「手術により癌を取りきることが難しい進行・再発胃癌に対する化学療法」と「手術後の再発予防を目的とする術後補助化学療法」があります。また最近では手術前に腫瘍を小さくして手術を可能にすることを目的とした「術前化学療法」も行われるようになってきました。
胃癌の薬物療法で使う薬には細胞障害性抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬があります。治療には一次化学療法から四次化学療法以降までの段階があり、一次治療の効果が低下した場合や副作用が強くなった場合などに、次の治療(二次治療以降)へと進んでいきます。
どの薬を使うかはHER2と呼ばれるタンパク質の発現の有無や、MSIと呼ばれる癌遺伝子の発現の有無で決まります。一次治療において、HER2陽性の場合はHER2タンパクの働きを抑制する分子標的薬を細胞障害性抗がん剤と併用することが推奨され、HER2陰性の場合は免疫チェックポイント阻害薬を細胞障害性抗がん剤と併用することが推奨されています。また二次治療において、MSI-high(遺伝子に入った傷を修復する機能が働きにくい状態)の場合は、免疫チェックポイント阻害剤を使用します。
前回のブログでもお話ししましたが、胃癌の早期は無症状であり、ピロリ菌感染もまた無症状であることがほとんどです。そのため定期的な内視鏡検査がとても大切です。
当院は4月から上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を開始予定です。胃がん検診の対象医療機関になる予定でもありますので、ご希望の方はご相談頂ければ幸いです。
お待ちしております。