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肝機能障害について②〜NAFLDについて〜

みなさん、こんにちは。

院長の河合です。11月下旬に入り、日ごとに寒さが身にしみる季節となってきましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。

前回は肝機能障害の原因と、その原因の1つであるアルコール性肝障害についてお話ししました。今回はアルコールを原因としない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:nonalcoholic fatty liver disease、ナッフルディー)についてお話ししようと思います。

 

 

NAFLDはアルコールを原因としない非アルコール性の脂肪肝から、脂肪肝炎や肝硬変に進行した状態までを含む一連の肝臓病のことをいいます。NAFLDのうち80〜90%は長い経過をみていても脂肪肝のままであり、非アルコール性脂肪肝(NAFL:nonalcoholic fatty liver、ナッフル)といいます。一方で、残りの10〜20%の人は徐々に悪化し、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:nonalcoholic steatohepatitis、ナッシュ)や肝硬変・肝癌を発症します。

 

NAFLDの有病率は、日本人の9〜30%と報告されており、肥満やメタボリックシンドロームの患者さんの増加に伴ってえてきています。男性では中年層、女性では高齢層に多いのが特徴です。

 

 

NAFLDの発症メカニズムについてです。肝臓は、腸管で消化吸収した様々な栄養素を取り込んで分解したり、新たに合成したりして、バランスよく供給する役割を担っています。食事で摂った糖分は、通常グリコーゲンとして肝臓に一時的に貯蔵されますが、過剰な糖分は中性脂肪に変換されて肝臓に溜まります。また食事で摂った過剰な脂質はもちろんのこと、タンパクが分解されてできるアミノ酸も過剰な分は脂質に変換されて肝臓に溜まります。食べ過ぎや運動不足で、摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、肝臓に中性脂肪が溜まり、脂肪肝となります。

肥満の方で、血糖を下げるホルモンであるインスリンの効きが悪い方や、糖尿病・脂質異常症の方も、NAFLDを発症しやすいといわれています。その他、最近では脂肪肝になりやすい遺伝的素因として「PNPLA3」などの遺伝子が関係していることが分かってきました。

 

次にNAFLDの診断についてお話しします。健康診断などで肝機能障害(ALT、γ-GTP値の基準値異常)を指摘されたら、まず腹部超音波検査での脂肪肝の有無を評価します。脂肪肝の所見が見られれば、肝臓の硬さ(線維化)の評価を行います。肝臓の線維化はFIB-4indexやNAFLD fibrosis scoreを利用します。これらの数値が高く、肝臓の線維化の可能性が高い場合はさらにエラストグラフィを行い、肝臓硬度を評価します。またNASHを発症しているかを確実に判断するために、肝生検を行うこともあります。

 

 

最後にNAFLDの治療についてです。先ほどもお話ししましたが、NAFLDは肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧症に伴うことが多く、メタボリックシンドロームとも密接に関連しています。NAFLDの治療の原則は食事・運動療法で生活習慣を改善することです。NASHの患者さんで肥満がある場合は7%の体重減量を目標に頑張りましょう!!

減量のみでは効果が不十分の場合はお薬での治療も考慮します。抗酸化作用のあるビタミンEや、インスリンの効きを改善する糖尿病の薬などが有効であるといわれています。また脂質異常症や高血圧症の薬もNASHに有効であることが期待されており、先述の併存疾患を伴っている場合は、こちらの治療も行なっていきます。

 

 

当院では血液検査、腹部超音波検査はもちろん、肝臓の線維化の評価も行なっています。NASHが疑われる患者さんは、肝生検が行える専門機関へご紹介させて頂きます。また専属の管理栄養士による食事・運動療法も行なっております。健康診断で肝機能障害を指摘された方、ご自身ではなかなか減量が難しく栄養相談を受けたい方はお気軽にご相談ください。お待ちしております。

 

文責 河合 陽介

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